エレベーター付三階建狭小住宅

そんな発想なかったわ 05

前回までのあらすじ。

狭小住宅をいかに充実にかつ、おしゃれにカッコよく作れるか。というコンセプトから始まった今回の企画。
前回、1回目の平面図が出来上がり、エレベーターの実装を可能にした狭小でも広く空間が保たれる三階建ての提案がまとまったのだが、I氏が最後にこう宣った。

「悪くはないんだけど、こうやって見るとなんか

「普通」なんだよねぇ…。」


出来はいいかもしれないが、「そんな発想なかったわ」とまでは行けていないのではないかと言う疑問符。
そこで我々は、順調に進んでいれば部材の選定などに入るはずだった今回の会議の議題を急遽変更し、前回の平面図からどこまで「新しい発想」が盛り込めるのか? というテーマに切り替え、今回の会議をすることにした。

S「というアレで、今回はこの図面にさらなる「革命」をもたらすわけですが、いかがでしょう?」
Sさんの問いかけに、会議は沈黙する。
デザインやレイアウトの作業で難易度が高い部類の作業がある。
それは出来上がったものを崩す作業だ。
一度、出来たもの(完成した)と思ってしまったものは、脳が終了のシグナルを出してしまうのか、そこから手を加えていくことが難しい場合が多い。
噛み砕いて言ってしまえば「もう出来てるんだからいいじゃん」と頭が結論付けてしまうのだ。
それでも納得のいく作品にするには一度、完成(完了)したミッションであることをリセットする作業から始めなければ、なかなかアイデアは落ちてこない。
今回もまさにその状況が生まれ、そして三人ともリセットするまで沈黙の流れが生まれてしまった。

Y「まずは、何が出来るかってのを、この図面から引き算してみようか?」
崩す手段としてYさんが提案してくれたのは「引き算」。完成したものから改めて不必要なものを探して、差し引いていく作業だ。
アイデアを出す時の簡単な流れとして一番行われるのは「足し算」である。
「足し算」は良いと思ったものをどんどん詰め込んでいくだけでいい。
しかし、詰め込めば詰め込みすぎるほど、コンセプトがズレ、余分なものが増え、作品は洗練されることなく混沌としてしまう。
しかし、引き算から始めれば、物事が差し引かれたマイナスの状態から足し算をスタートすることが多いため、整理整頓が上手くいくことが多い。
Yさんは、営業として培ってきた経験から、引き算を始める選択肢を選んだ。
引き算の作業は、苦手な人間が多い部類だが、IさんとSさんであれば、そこから始められるという憶測があったからこそだろう。

結果、Iさんが口火を切った。
I「まず、取っ払えるものとしては柱だね。一回のトイレの前に持ち出されてる通し柱はなくても大丈夫だと思う。ここに支えがなくても構造計算はできるはず。」
S「なるほど。その発想ができるなら、耐力壁として必要な部分を何か違う工法や部材で攻めれないですかね? 例えばリビングの窓。ここの両サイドの耐力壁を取っ払って、大開口にできるとグッと雰囲気変わりません?」
Y「う〜ん。そこはさすがに難しくない? 鉄骨使うならまだしも木造で、そこまでやっちゃうと耐えれない気がするけど…」
そう呟きながらも、スマートフォンでYさんは何かを調べだす。
それに合わせて、Sさんもスマートフォンをとりだした。特殊な部材を探すことにしたのだ。

数分後に、最初に突破口を見つけたのはYさんだった。
Y「これどう? 「クリスタル・マジック」耐力壁の強度を持つ透明な板。こいつなら窓の左右に取り付けて大開口を演出できそうじゃない?」



S「僕も見つけました! フルオープン型の大開口窓「ドルフィンウィンドウ」!」



I「どっちも面白そうだね。一回このへんを使ってどう見せれるか揉んでみよう」

こうして、アイデアの引き算と足し算が一時間以上続き、様々なアイデアが出ては消え、決定しては保留になりを繰り返し、まとまった修正案がこちら。
<!>会議の内容は、あまりにも複雑なため今回は、割愛します。 

1F修正案
 
Yさんの探し出した「クリスタル・マジック」を採用(リビング窓部赤部分)。
通常の窓の両サイドを透明化にすることにより、窓を既存の企画の倍の広さで設置。ふんだんに光を取り込める1Fとなった。
さらに、室内にも「クリスタル・マジック」を取り入れ、これによりホールからリビング(リビングに設置された自慢のエレベーター)を見せることが可能になるという贅沢仕様へ!
Iさんが必要ないと引き算してくれた通し柱も撤去となり、すっきりかつ透明感のある1Fへと変貌を遂げた。

2F修正案

こちらも窓を「クリスタル・マジック」を使用して大開口に。
吹き抜けを利用した1Fと2Fの大開口窓は明るい空間を演出できると期待が持てる。
さらにYさんのアイデアで、図面上部に設置された洋室のクローゼットを可動式にすることになった。
可動式のパーテーション中央を間仕切りできるように考えていたが、これにより洋室二部屋は、一部屋となり、クローゼットの配置を自由にすることで、二部屋ともなる自由な空間設計が可能となった。

3F修正案

最後に3F。
ここはパンチングの床が存在するため、構造を生かし窓をS氏提案の「ドルフィンウィンドウ」にすることが決まった。
全面開口が可能の窓となり、さらにベランダを3Fだけ2Fの倍持たせるデザインに変更することにより、屋上のような開放感のある3Fが生まれた。

I「なかなか面白くなったんじゃない?」
今回のテコ入れで、Iさんも納得できる「そんな発想なかったわ」が生まれた。
YさんもSさんも、新しい提案が生まれたことに満足感と達成感を感じていた。
I「あとは外観だね」
Y&S「外観もありきたりでしたか〜〜〜(心の声)」
ということで、次回は修正版の図面と外観のテコ入れ編となりそうです。

つづく
ミツイワ建設

〒445-0803
愛知県西尾市桜町4丁目35番地
TEL/0563-54-5331
FAX/0563-56-5399
【定休日】日・祝日 ・第三土曜日

Copyright(c) ミツイワ建設 All Rights Reserved.